簡単な医療講座
◆特発性正常圧水頭症(PDFファイル)
◆頚動脈狭窄症(PDFファイル)
◆ブレインアタック
今月の「簡単な医療講座」は、当院の杉浦院長が、5月8日(月)にFM熱海湯河原の取材で特集にとりあげられた「ブレインアタック」を紹介します。
今日は、皆さんが関心を持たれている脳卒中について、特に高齢者が増えて大変多くなっている脳梗塞について一緒に考えてみようと思います。
院長 杉浦 誠(すぎうら まこと)
専門:脳腫瘍・てんかん・頭痛・脳神経外科一般
診察日:午前(水・金) 午後(月・火)
- 最近脳卒中のことをブレインアタックと呼ぶとのことですが?
- そうですね、その状況から説明しましょう。
心臓発作は英語でheart attackと言います。心臓の発作に直ちに対処するのは常識です。激しい痛みや冷や汗などが生じ、実際倒れて動けなくなってしまいますし、とても重病感がある場合が多いのです。
脳卒中の中でも、脳出血、くも膜下出血は、発症が劇的ひどい頭痛が生じ、激しく吐いたり、意識もなくなり、強い麻痺が生じるなど、やはり重病感が強く緊急性を以前から理解されていました。一方、脳血栓、心臓から由来する脳梗栓、ひとまとめにして脳梗塞といいますが、突然起こるのでなく、徐々に症状が出る場合が多い、少し手が動きづらいとか、足が利かないとか、穏やかな症状が多いのです。様子を見て治らないのでと数日たってから病院を訪れる。症状には気づいていたけれど、緊急性があると思わなかったということです。これは手遅れなのです。
脳梗塞には痛みがないのも災いします。手足が動かない、うまく歩けない、目が急に見えにくくなる、言葉がもつれる、言葉を忘れたように言えなくなったり、めまいがしたり、でも多くの例で痛みがなく、重病感に乏しいのです。心臓発作と同じように、急がなくてはだめだということを強調するために、脳卒中をブレインアタックと呼び変えているのです。 - なぜ、そんな理解しかされていないのでしょうか?
- 10年前までは有効な治療法がなかったので、脳梗塞には医者の対処ものんびりしていたのも事実です。肺炎、消化管出血などの合併症の治療が主で、脳梗塞に対して直接できたことは慢性期になってからの再発予防や、めまい、頭痛、しびれ、認知機能障害に対する薬物療法が主体でした。手術という具体的な治療手段があった脳出血やくも膜下出血とは対照的でした。
ところが今や時代は変わりました。有効な治療法が出てきたのです。 - 大変期待されますが、どんな治療法があるのですか?
- t-PA、組織プラスミンアクチベータという薬が開発され、今から10年前1996年に欧米では、t-PAによる治療が有効と認められ、症状が出てから3時間以内の超早期から治療を開始すべきであるとされました。ブレインアタックと銘打って、テレビを中心に大々的なキャンペーンが行われ、救急車を使って直ちに病院を受診し、治療を開始することがすすめられました。日本にも情報は入ってきましたが、欧米の薬をそのまま使うことはゆるされず、改めて研究しなおしているうちに10年たってしまいました。
半年前の2005年10月に、やっとその特効薬t-PAが認可され、日本でも使うことができるようになりました。静脈注射によって脳の血管に詰まった血栓を溶かす薬剤ですが、発症から3時間以内に使わなくてはなりません。これより遅れてしまうと、脳出血などの怖い副作用が増えるからです。出血を起こしやすい病気がある場合にも使えません。3時間以内といっても、病院に着いて、診察をして、CTやMRIで検査して、血液生化学検査、心電図などで全身の状態や出血しやすいかどうかを確認し、患者さんやご家族から病歴を聞いて、さらに治療法の説明をし、承諾を得てからでないと、治療に移れませんから、実際には、症状が出てから、せめて1時間以内に病院に来てもらえないと特効薬は使えないのです。
特効薬t-PA以外にも発症から24時間以内でないと効かない脳保護剤のエダラボン、発症48時間以内に使うアルガトロバンという血栓溶解剤がありますが、いずれも使える時間が限られています。脳梗塞の治療は時間との戦いで、発症と同時に、救急車で病院に駆けつけなければ有効な治療を受けられない時代なのです。治る病気も時間が遅れると治せません。“Brain Attackの時代”なのです。 - 最善の治療を受けるには?
- ともかく倒れたら救急車です。診断のためには、CTなどの画像診断が絶対に必要です。脳に由来する症状かどうかは神経学的な診察でわかるが、脳出血なのか?脳梗塞なのかを決めるにはCTによる検査が絶対必要です。
- MRIについてはどうなのですか?
- 脳梗塞はCTでは超急性期的には発見しにくいので、脳の血管の状態を見ることも含めて、できればMRIで診断することが理想です。
- 私たち市民はどう行動したらよいのでしょう?
- 脳梗塞の兆候を無視してはならない。気づくのは周囲の人です。
どんな病気でもそうですが、本人は無視したがる、まさかと思って、自分だけはそんなはずはないと思い、少し休めば治るだろうと様子を見てしまう、さらに困ったことは脳の病気なので、脳が犯された結果、自分の病状を認識して判断することができなくなってしまいます。もっと困るのは、意識がもうろうとし、手足が不自由になると、動けなくなり、一人では病院にくることができなくなります。電話もかけられないし、大きな声も出せなくなり、人を呼ぶこともままなりません。周囲の人が判断して、病院に連れてこなくてはなりません。 - 一人暮らしの市民も多いですね?
- 一人暮らしだったり、ご家族がいても昼間はみんな働きに出ているといった状況だと事態はさらに深刻です。意識がない状態で、半身麻痺が出て動けない状態で、家族が家に帰ってやっと発見され、すでに数時間が経ってしまった、2~3日経ってやっと発見されて手遅れだったということがよくあります。一人暮らしの方はぜひ、ご近所と仲良くしてください。重症はもちろん、軽症と思えても直ちに病院へ!たらい回しなどに合うとたちまち間に合わなくなります。
移動手段は救急車で適切な施設へ直ちに向かう。時は金なり“Time is money”ではなくて、時は脳なり“Time is brain”です。
◆FM熱海湯河原とは?
主に熱海・湯河原の情報、お知らせを放送しているラジオ局です。また現在活躍中のインディーズ・アマチュアバンドの音楽を流したり、ゲストとして招いて番組を構成しています。
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※バナー・写真はFM熱海湯河原ホームページより転載









